学校法人福田学園 大阪工業技術専門学校 校友会(OCT)のコラムです

コラム

  • 2021.05.26

「ウッドショック」木材価格が高騰!?業界が震撼!!

「ウッドショック」と呼ばれる木材不足が深刻化しています。2021年、住宅用の木材の不足、価格高騰は世界的な懸念事項です。ウッドショックの原因や日本の住宅市場に与える影響を考えてみます。

ウッドショックとは。その背景・原因
 短期間で急激に木材が不足し価格の高騰が起きるウッドショック。2021年4月時点で、世界的な木材の価格は前年を大幅に上回っていると言われています。
 過去にも1990年、2008年とウッドショックと呼ばれる状況がありましたが、その時もそして今回も、この問題の発祥は米国です。今回のウッドショックは、新型コロナウィルスの影響が色濃くあります。感染当初こそ住宅市場は冷え込んだものの、在宅ワーク、リモートワークなどの普及によってアメリカ国内の住宅需要は右肩上がりに急増。需給のバランスが崩れ、価格の高騰に歯止めがかからない状態になっています。 アメリカでの木材需要の高まりが日本にまで波及するのは、日本の住宅で使用している木材の大半が輸入に頼っている現状があるからです。林野庁の発表によると日本の木材自給率は37.8%(令和元年)です。
 世界の木材はアメリカに集まる傾向があり、その市場動向は日本にも多大な影響を与えることで知られています。また、今回のウッドショックは中国の住宅市場の需要増も原因していると言われ、そのうねりはこれまで以上になるのでないかと、業界関係者の間で懸念されています。 アメリカでは、在宅勤務の増加などに伴い、住宅市場が活況だ。しかし、その影響による木材不足や海上輸送運賃の上昇で、木材価格の高騰、いわゆる「ウッドショック」が影を落としている。 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の木材先物価格チャートでは、昨年4月(264ドル/1000ボードフィートあたり)から上昇傾向に転じ、最新の5月17日時点で、1327ドルとなった。1年余りで5倍の価格高騰ということになる。
 「ウッドショック」の波は、すでに日本にも押し寄せている。林野庁の担当者は、「昨年の秋頃から、市場に不足感が出始めた」という。コロナで需要が下がったという事情はあるものの、2020年の木材輸入額は前年比19%減にまで落ち込んだ。木材価格は、昨年一時的に下がったが10月頃、例年並みにまで戻り、この4月さらに上昇した。同担当者は「種類によって価格はまちまちだが、コロナ前と比べ全体では1.3〜1.5倍の価格上昇が見られる」という。

日本産の木材は使える?日本の木材供給量
 輸入木材に頼れないなら国産にシフトすればいいのでは、とは誰もが考えることです。実際、日本の国土の7割は森林と言われています。しかし前述のとおり、日本の木材自給率は37.8%と決して高い数値ではありません。
 ここにはふたつの問題があると考えられています。ひとつは急激な需要増に対してすぐには供給を増やせない現状の体制。そしてもうひとつが過去の森林政策の誤りです。
簡単に供給を増やせない理由は、商用の木材を市場に出すまでには一定の時間がかかるためです。伐採を決め、山から木を出すだけでも要員の手配などで数カ月はかかると言われています。さらに切り出した木材は乾燥させなければ使い物になりませんが、この作業は時間ががかる上、乾燥機のキャパシティにも限りがあります。
 ウッドショックは一種のバブルです。バブルのために設備投資を新たにしたり、日頃から十分なストックを確保するだけの余力を持つ会社が多くないことは想像に難くありません。
 そもそも論として、「日本は国土の7割が森林なのになぜ輸入に頼るのか」「自国の木を使うべきなのではないか」という声が聞こえてきそうです。なぜ、そうできないのか。理由を探っていくと、戦後の日本の森林政策に行きつきます。
 昭和20年代、戦争によって日本の森林は荒廃していました。しかし、木材そのものは復興期における資材として、また家庭でのエネルギー源として重宝されていました。高い木材需要にこたえるべく、日本は国策として人工林を拡大していく方針を取りました。昭和30年代には日本の木材の自給率は9割を超えています。
 時代は高度経済成長へと向かっています。木材需要はますます拡大していきます。しかし、その需要を満たしたのは人工林に植えられた国産材ではなく、自由化された輸入材でした。昭和40年以降、国産材の供給はむしろ減少していきます。拡大路線の後に残ったのは、成長した人工林と保育の必要な森林でした。このころ山林はすでに過疎化、高齢化が進んでいました。森は拡大するけれども、木材として供給が増えるわけでもなく、十分なメンテナンスを行うだけの人もいない。
 この悪循環は日本の林業を衰退させ、手入れの行き届かない荒廃した森林を後に残すこととなりました。ウッドショックのようなことがあっても簡単に国産材へと舵を切れない理由は、こうした過去の森林政策の影響から未だ抜けきれない現状があるためなのです。

国産材工場はフル稼働
 輸入材の不足が深刻化する中、国産材シフトが加速している 。林野庁の担当者によると「国産材の工場はフル稼働で、通常より生産体制を強化している。輸入材の代替を求めてやってくる新規顧客もいるが、供給が追いつかず、販売を断るケースもあると聞いている」という。 一方で、国産材へのシフトに懸念も示す。「住宅の梁(はり)など、荷重のかかる部分には欧州などからの輸入材が使われる。国産材に目が向いているが、例えばスギは強度が少し弱く、(国産材を使うとなれば)設計上の変更が必要になるだろう」。
 林野庁は4月30日、住宅業界に対して余分な買い占めや過剰な在庫をもたないよう要請を出した。しかしメーカー側は「ウッドショックは比較的長期間続くのでは」との見方が多く、先の見えない状況だ。

生産者とっては好機?
 住宅メーカーなどにとっては苦境である一方、木を伐採する業者には好機になるのではと、同庁の担当者は説明する。「国産材は、これまで安く売られてきた。今回ウッドショックで国産材も価格は上がっており、山側(木材生産業者)にとってはありがたい状況ではないか」。 高く売ることができれば、利益の幅は増え、供給のためにより多くの木を新たに植えることができる。ウッドショックは誰にとっても悪ではなく、日本の林業にとってプラスに働く可能性もある。

ウッドショックが日本に与える影響
 日本の林業、また木材を利用する建築、不動産業界も現状を良しとしている訳ではありません。今後の改善には大いに期待をしたいところです。しかしながら今回のウッドショックへの有効策を即座に示すのは困難です。ウッドショックが日本の住宅市場にどのような影響を与えるか、考えてみましょう。
 まず考えられるのは新築一戸建ての価格高騰や新規着工数の減少です。特に注文住宅のように契約後に木材を発注するケースではウッドショックの影響を免れるのは難しい状態です。ある程度の数量の木材を確保できているであろうハウスメーカーでも、いつまで価格を維持できるか状況は不透明です。 こうした状況に住宅建設の現場では、今後は「工期が遅れる可能性もある」という合意書を客と交わす事態にまでなっています。
 新築の価格が高く、供給数も少ないとなると、消費者の目は中古流通へ向かいます。東日本不動産流通機構の調べによると、2020年度の首都圏中古戸建住宅の成約件数は14,102件で3年連続の増加。件数としては過去最高を更新しています。コロナ禍にあって一戸建ては地方でのニーズも高く、すべての都県・地域で前年度を上回っている状態です。ウッドショックによって新築から中古流通市場へニーズが移るようなら、さらなる価格の高騰に注意しなければならないでしょう。
 戸建ての供給が滞れば、マンションへ希望を変更すると言った動きが出る可能性もあります。木材不足は単に一戸建てにとどまらず、不動産市場全体に幅広い影響を及ぼす恐れがあるのです。
 今、買うべきかどうか。2021年はウッドショックの市場への影響を吟味したうえで、購入の是非を判断することが求められています。

オウチーノニュース・他ニュースより 引用

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